2014年11月11日

クロノクロスプレイによる考察(マンガのパラレルものの難しさについて考える)

クロノクロスを先日クリアし、その後貸した友人もこのたびクリアしたらしいので
ふたりで感想を話してみた。その際に話したことが興味深かったので備忘録として残しておく。
(このブログ内容にふさわしくないかもしれないが、載せておく所が他になかったのでとりあえず)

結論から言うと、クロノクロスは「微妙」「いまいち」「惜しい」作品である。
では、クロノクロスがクロノトリガーのように誰もが認める名作になれなかったのはなぜだろう。
「プロデューサーの腕」とか言ってしまうと身もフタもないので理由づけしてみる。
①世界のルールが不明瞭
②キャラが薄い・感情移入できない
③古参の期待をヘシ折る内容かつ新参が付いていけないほどに説明不足
④①のくせに、論理的に考えさせようとするストーリー(そのせいで雰囲気ゲーとすら言えない)
…ここまで言ってるけど、いちおう言っておく。
おいら別にクロノクロス嫌いじゃないのよ?ツクヨミ好きだし。ツクヨミ鋤だし!(大事だから二度言った)

今回は「①世界のルールが不明瞭」について詳しく考えてみた。
そもそも、パラレルワールドものの話は多いが、非常に駄作になりやすい。それはなぜか?
パラレルワールドでは世界の設定・ルール(世界観)が独りよがりになりがちだから、である。

ファンタジーにおいて最低限のルールづけは必要不可欠である。だがパラレルワールドものは
その際のルール付けがうまくいかず、「パラレルワールドだからそうなった」などという結論になりがち。
それはすなわちストーリーの破綻を意味する(だってそんな話、問答無用でつまんないでしょうが)。
逆に現代モノのストーリー破綻は少ないといえる。なぜなら世界のルールが定まっており、
現代に住む読者もそのルールを知っているからである。

人間は不確定な要素(理由が分からないこと)があると、精神状態が不安定になるという性質を持っている。
その性質を持っているから、神話が誕生したなどと言われているくらいらしい(世の中の分からないことに理由付け)
例えば昔は病気になっても理由が分からなかった。しかしその状態というのは人を磨耗させる。
それを防ぐため「呪い」だの「神の怒り」だの無理矢理な理由付けをして、心の安寧をはかったともいえる。
この理屈だと、病院にいるじいさんが「ワシはガンなんじゃろ!」と医者に問い詰めるのも、
理由の分からない不安から逃れたいがためである(単に健康だと言ってもらいたいのかもしれないが)。

そして不確定な要素が多ければ多いほど人は不安を増大させ、作品への感情移入もできなくなっていく。
話の内容よりも、分からないことのほうが気になってしまうからである。
ストーリーが終了するまでにその不明点が解き明かされればいいが、それが成されないとモヤモヤだけが残る。

クロノクロスは「どゆこと??」という説明がない部分が大小合わせてとても多かった。
それは世界設定が曖昧だったから、という部分が多いように思われる。パッと思い浮かんだのを書いておく。
(例:主人公の生死が世界を分けたという割に、それ以外にも不明な変化が多すぎる・六龍が別々の世界に3体ずつ生存
 ラスボスが●●を癒すだけで何故か死ぬ(なんでじゃ。本体までどうして死ぬ?闘わせろ)。
 ↑おまけに瀕死になると自らメロディを奏ではじめる(自殺か?)・ペンダントが2つ存在?
 ●●が主人公にファーストインプレッションで固執した理由・●●が子供で髪色が…!等 ※●●は同一人物)
そして都合が悪くなると「悪いのはみんなあの人です。あの人が仕組んだんです」という話。無茶言うな。

クロノトリガーはタイムトラベルものである。過去現在未来と世界を作らなければいけないのは大変だが
パラレルものに比べれば圧倒的にルールが分かりやすい(過去の行動で現在未来が変化する、が基本)
また過去現在未来、という概念は読者に理解されやすい。
なぜなら自分が過去現在を生き、その先が未来だと知っているからである(そのため説明が簡略化できる)。

しかしパラレルワールドにおいては、読者にとっては体験できない完全なファンタジーである。
あるかどうかすら分からないし、行く事も当然不可能。そのため明確で詳細なルールづけが必須だ。
そしてそのルールをきっちりと読者に説明・理解してもらわなければいけないという障壁ができる。
(クロスのように「詳細は想像or攻略本を読んでね!」はどう考えても怠慢。説明は作品内ですべきだ)
このあたりの説明がない、または圧倒的に不足している作品が多いので、駄作になりがちなのである。

おまけにクロスはトリガーの話までも取り込んだため、ますますカオスな状態になってしまった。
タテの世界軸(過去現在未来)だけでなくヨコの世界軸(パラレル)まで話に取り入れてしまったことで
大風呂敷をさらに広げ、ますます話が破綻してしまう可能性をハネ上げてしまったのである。
タテ世界軸しかないトリガーですら、纏めあげるのは至難の業だっただろうに…
しかもコレ、世界観の問題という話だけでありストーリーの出来とはまた別の問題である。
頑張って世界観を作り上げたとしても、最も肝心なのはストーリーであって世界観は背景にすぎない。
だがしかし背景をないがしろにすると、途端にストーリーがつまらなくなるのである。

ここまで話したが、自分はクロノクロスを叩きたくて文章をまとめたのではない。
ファンタジー系のマンガ(特にパラレルワールド系)を仕上げる際に、とても重要な話だと思ったからだ。
マンガを描く際は合作という例外を除き、世界観・ストーリー・コマ割り(カメラワーク)・
セリフ(言い回し)・絵を全てひとりでこなさなくてはならない。こうやって考えてみるとすごい仕事である。

ここで重要なのは、上記の世界観を作るという仕事と、人間関係(ストーリー)を作るという仕事が
あまりにも才能のベクトルが違うのではないか?ということである。
ファンタジーでこの2点は重要である。絵やコマ割りも大事ではあるが作品の面白さに大きくは関わらない。
例えば映画において制作費が安く背景がショボくても、話と世界観(とキャスト)が良ければ名作になりうる。
※マンガにおいてキャスト(キャラクター)が大根役者ということはありえないので問題なし

この2点は重要でありながら、非常に漫画家泣かせといえるのではないだろうか?
世界観の設定は、ガチガチの決まりごととして、淡々と理論的に矛盾がないように作成しなければならない。
言ってみれば左脳型・どちらかというと理系向きの仕事である。
だが人間関係の動き(ストーリー)は感情的・心情を多く取り扱い、ジェットコースターのように上下する。
どちらかというと右脳型&文系向きの仕事ではないだろうか。

どちらかをうまく作れる人は多いかもしれないが
左脳向きの舞台設計、右脳向きの人間関係表現」を両方うまく作れる、そういう人は非常に限られる。
にもかかわらず、どちらかがうまくいかないと作品全体がつまらなくなってしまう。

結論:ファンタジーもの(特にパラレルものを作る時)は、じゅうじゅう注意したほうが良い。
ストーリーが良かったとしても、舞台設定でコケる可能性が高すぎるのだ。気軽に考えがち(な気がする)だが
作りこみすぎなくらいに緻密に作りこまなければならない。写実的な漫画にはない怖さがそこにはある。
posted by 洒落子&白米公 at 03:44| Comment(0) | その他 | 更新情報をチェックする
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